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行政のムダ取り
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1 ムダの判断

6つの行政のムダに該当するものはないか、考えれば思い浮かぶものが次々と出てくると思います。職員は、普段から気づいているのです。

それまで強く求められなかったからやらなかっただけで、何がムダかは職員が一番知っています。

繁忙期において一番やりたくなかったこと、後回しにしたことなどを職員にリストアップさせ、原則的にその仕事は廃止します。

迷ったらどうするか、―迷ったら廃止します。

必要に迫られたら復活させればいいのです。

廃止できないものはどうするか、―簡素化を検討させます。

最低限満たす程度でいいのです。

職員が廃止したいという程度の仕事ですから、本質的に必要不可欠な仕事であるはずがありません。

管理職からすれば、それは必要な仕事だと思うものもあるでしょうが、とりあえず廃止します。

職員にムダだ、やめてもいいと思う仕事をリストアップさせ、廃止するか、減らすかして、時間目分量で3割程度の仕事を減らします。

そうなると、職員から多くの提言が出てくるようになります。

職員は、基本的に楽をしたいわけですから、こうすれば簡素化できるというような提言が出てきます。

そういう提言を大事にして、表彰したりして、職員の改革モードをさらに高めます。

結局、改革とは、仕事の内容を検討し、改善を通じて、減らし、効率化し、その余力を他に生かしていくというやり方なのです。

間接部門の仕事は工場現場等と違って考える仕事だから改善は難しいとよくいいますが、決してそういうことはありません。

県や国のやっている仕事でも、市町村や都道府県の資料の集計など、作業と言えるものも少なくありません。

また、部局間・省庁間の調整、議会や国会の対応などにおいても、多くの時間を要していますが、その中にはムダといえるものが多数あります。

結局、改革とは、仕事の内容を検討し、改善を通じて、減らし、効率化し、その余力を他に生かしていくというやり方なのです。

間接部門の仕事は工場現場等と違って考える仕事だから改善は難しいとよくいいますが、決してそういうことはありません。

県や国のやっている仕事でも、市町村や都道府県の資料の集計など、作業と言えるものも少なくありません。

また、部局間・省庁間の調整、議会や国会の対応などにおいても、多くの時間を要していますが、その中にはムダといえるものが多数あります。

2 5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣(躾け))

役所のムダ取りに突き進んで、うまくいかない場合もあると思います。

ムダ取りは、何のために行うかという意識改革が伴わなければ、ムダだという職員と必ずしもそうではないと言って何も変えようとしない職員の軋轢を生むことになるでしょう。

このような場合に、きわめて基本的なことですが、大きな効果をもたらしたものがあります。

それは、5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣)です。

これは、乱雑な工場現場で基本的なことをできないワーカーにホワイトカラーが指導しているようなイメージと受け取られかねないのですが、まったく違います。

特に、公務員にこういう話をしますと、もともとそういうことはできていると思っていますから、「整理整頓など、家庭で子供に躾けるような話を何故役所で言われなきゃならないんだ」とか、「バカにしているのか」とか反発されました。

しかし、私どもの指導を担当されたケーズエンジニアリングの近藤さんから、試しに、「整理と整頓はどう違うか」と聞かれても、答えられる県職員はいませんでした。

日本語の「整理」は「不必要なものを取り除くこと」、「整頓」は「きちんと片づけること」と同じような意味と理解されていますが、仕組みとしての「整理」は「要るものと要らないものを区別し、要らないものはすぐに捨てること」、「整頓」は「要るものとして残したものから、必要なときに必要な分をすぐに取り出せるようにすること」と教わりました。

これは衝撃でした。私たち公務員の多くは、育つ過程において、整理整頓などは比較的よくできた人が多いと思います。

多分、ですが。そういう整理能力があったからこそ受験戦争にも勝ち抜いてきたと思っていたのですが、実際、公務員になってみると、優秀といわれる人でも、さっぱり決裁書類を回さない、ひどいときは数週間も机上に放置て、文書を起案した担当課から問い合わせやクレームが来たという光景を結構見てきました。

この間、相手の仕事を止めているわけです。プロセスを分析し、どういう作業に、どのくらい時間、コストがかかるか分析する時代に、書類の回し方は自由というのでは、コスト意識ゼロと言われかねません。

また、躾け=習慣といっても、そんなことは家庭や学校でやることではないか、といわれます。

しかし、ここでいう躾け=習慣とは、道徳的な観念ではありません。

整理整頓清掃清潔など決められたことを決められたとおり行えるように習慣づける、ということです。民間企業では、社内研修で、社員に対して、挨拶の仕方、礼の仕方など身につけさせます。

しかし、役所というのは、一応研修はやりますが、やりっぱなしで、まず身についていない。

ちなみに、役所の人で、腰を60度まで曲げたお辞儀をする人、見たことありますか。研修ではやっているのです。デパートではどうでしょうか。

銀行ではどうでしょうか。

後者は、お客さまから選択してもらって商売していますから当然だという人もいますが、その企業を選択してくれない人にも、お客様として丁寧な対応をしています。役所は、一部のお客様どころか強制的に全員をお客さまにして、税金をとっているわけです。

もっともっと丁寧に応対してもおかしくありません。

ちなみに、役所の接遇などの研修効果を測定したら、どういう評価になるんでしょうか。

つまり、日本語ではなく、仕組みとしての整理整頓清掃清潔習慣は、私たちは頭でも理解していませんし、行動としても取ってこなかったのです。

改革改善に当たってうまくいかない場合は、この5Sから入っていくのが抵抗が少なく、もっとも迅速に理解してもらう方法だと思います。

3 5Sの進め方

(1)目で見る整理

職場の中には、不要な書類や備品等があります。

自分の周りにあるものが普段の業務に必要かどうか整理しなければなりません。

また、職員は、どうしても必要だと思いがちです。

誰が見ても必要か不要か判断できるようにしなければなりません。

そのためには、書類や備品などにシールを貼って、いつまでに廃棄する、減量する、等を決めます。岩手県では、これを赤札作戦と呼びました。

(2) 計画を立てる

① リーダー、メンバーなど体制を作る。

② 期間、対象などの計画を作る。

③ シールを貼る対象を決める。

  設備(コピー機、机、椅子、台車、備品等)

  在庫(備品、配布資料、掲示資料、コピー用紙、文房具類、書籍等)

  スペース(床、棚、書架、動線等)

④ 要、不要の基準の決定

⑤ シール(赤札)の作成

(3)シール(赤札)の貼付

リーダー、メンバーで、現場の職員と話し合いながら、シールを貼る。

① 現場の職員に貼らせない。職員は何でも「必要」という。

② 冷めた目で見る。シールを貼るときは、鬼になる。

(4) シールを貼られた物の評価

①  不要なテーブル、机、椅子がないか。

  例―管理職全員の前に丸いすが数個も置かれている。

  折りたたみ椅子が立てかけてある。

  テーブルが何個もあってスペースをふさいでいる。

② コピー機、フアックスが多過ぎないか。例―係ごとに、コピー機や

  フアックスが置いてあるが、そんなに使用頻度がない。

③ 部屋の中に不要なスペース、空間はないか。動線は確保されているか。

  例―部屋の中に不必要にテーブルやスペースが開いている。

  机の両側に通路があるが、人がすれ違えない。

  片側に寄せて動線を確保する。

④配布資料、掲示資料、コピー用紙、文房具類の在庫は、適正か。

  例―年間で使い切れないほどの筆記用具を購入し、

  数年後に使おうとしたらインクが出なくなったボールペン、

  硬くなった消しゴム等がある。

⑤備品、書籍等で死蔵化しているものはないか。

  例―加除されていない法令集、古い年度の補助要綱など、

  現在では使えない物が書架を占拠している。

(5) 管理者によるチェック

  毎週少なくとも月に1度は、管理者によって、

  チェックすることよって、継続される。

4 5Sの取組みのポイント

(1)考え方

① まず自分の身の回りから行動すること。

② 全員参加で行う。

③ 安全、快適という狙いから、仕事の質の向上、生産性の向上へ。

④ 最高の状態で仕事をするための準備

 

(2) 5S評価基準書の作成、実施、点検等

① 整理から習慣までそれぞれの点検項目を決める。(図―参照)

② これを評価基準書として、各課各室で点検。

③ 管理職による点検

④ 改善結果の張り出し

 

(3)定着化、標準化

①点検項目の9割ができたら定着化したと見る。

②標準化しマニュアルとする。

5 チェンジリーダーの育成

また、改革には率先して取り組むリーダーが必要です。

改革は、第1にイノベーターと呼ばれる、生まれながらにして改革を志向する職員にやらせることです。

どこの職場にも必ず今のやり方はまずいのではないかと日頃から改革を訴える職員はいるものです。

上司から見ればどうも文句が多くて使いづらいが、よく聞けば至極もっともなことを言っている、という職員です。

上司が気づいていなくても、仲間は見ています。

そういう改革なら彼は普段から言っている、彼をおいて適任者はいない、という職員がいるものです。

また、組織を挙げて徹底してやるためには、公務員の世界の独特の文化を活用すべきです。各年次のリーダー的存在の職員を数人選んでやらせることが全体を動かすことになります。

役所の場合、同期の中で又は数年次の間で競争しています。

先輩後輩がどこまでやるか、同期がどこまでやるかが標準になっています。

役所の人間はきわめて慎重ですから、やらないわけではない、しかし、やりすぎることもしません。こういう慎重な種族を動かすには、みんなで渡れば怖くない、の逆、やらなければあなただけ取り残される、という焦燥感を与えることです。役所の人間は、まず同期の職員を見ます。

同期のうちのリーダー的な存在の数人が一生懸命始めれば、ただでさえ力の差があると思っている職員は、置いて行かれまいとして必死になります。

これは、先輩後輩を見ても同じです。

先輩のトップを走る人たちがどんどんやると、やらなければ置いていかれるという気分になって、みんながんばります。

改革チームには、入庁年次の各期のリーダー的な存在の職員を3、4人据えます。どの年次でもトップクラスが引っ張れば、みんなやります。

組織の中で、各期から数人ずつ出して改革チームを造ります。

ポストに関係なく、局長級から何人、部長級から何人というように、トップクラスを選んで改革チームを作り、全権を与えます。

特に、人事権を持つものをその中枢に置くことが重要です。

やらないものはハズす、という首長の強いメッセージが伝わります。

かつ、改革について評価しますから、取組みが弱い、形だけのものになっているという評価の管理職は、将来を託すに値しないということですから、さっさと代わって貰うことです。

首長の掲げる改革の方針に積極的に取り組めない人は、ポストもコストも、住民のため、国民のために仕事をした結果として住民・国民が与えているということを理解していないと判断すればいいのです。

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